本をめくるように
明日の朝イチに引っ越します。
引っ越すというのに、関西から九州まで移動するというのに
引っ越すことを告げる相手もおらず
さよならをする相手もおらず
眠って朝が来るかのように
自然と何事もなかったようにここから去るのです。
ここでの営みに意味があったかどうかはわからないけれど
9年を過ごしても誰ともさよならする必要のないこの薄い人間関係しかつくれない自分自身を改めて確認しました。
家から出なくても、人と繋がらなくても、
あまり苦を感じないという己の性質は、悪いものではないとは思うけれども人間としては欠陥なのでしょう。
実家で暮らすということは、
私にとっては戦場に帰るような気持ちではあるけれど
戦場でありながらも、母が、父が、好きなのです。
憎みながらも好きなのです。
本をめくるように、なんの感慨もなく、
自分がこの土地からいなくなるということ
ただそれだけなのだ。
会いたい人もいなければ会うべき人もいない
そういう人生なのだ。
ただそこに在って、在るだけであり
それ以上になにもなく。
人とはそういうものなのだろう。
意味はきっとなかった。
むしろ、自分さえここにいなければ
誰かを不幸にはしなかったかもしれない
誰かを搾取しなかったかもしれない
そうはいったところで過ぎたことは仕方ないのだ。
誰からも好かれず、憎まれるだけかも知れなくても
終わったことはやり直せないしやり直したいと思わない
9年でも10年でも、それが100年でも
私の体感では
一ページなのだ。
ただページをめくってめくって
それだけで過ぎて記憶も想いも自信も
なにも残らない。
欠陥品だと自覚して。
ページをめくる。